グリース: TVスペシャルライブでのmRes使用事例

コロナ前の古い話ではございますが、2016年1月に米国大手テレビネットワークによるブロードウェイミュージカル「グリース」の全国生放送ドラマについて少し紹介させていただきたいと思います。そもそも、生・ライブでドラマを放送するという発想自体が近年では信じられないですね…。欽ちゃんやドリフターズは生放送でしたが、国内ドラマでは私の記憶にはありません。
「グリース (Grease)」について、ご存じの方も多くいらっしゃるかと思います。1978年にジョン・トラボルタとオリビア・ニュートン・ジョンが主演の映画が最初、と思っていたら、1971年 ミュージカルが始祖のようです。サウンドトラックが素晴らしいので納得。
このビッグタイトルのライブ放送を成功させるには、多くの技術的な課題が生じました。主な懸念の1つは、制作要件に加えて、テレビをはじめ、現在視聴者が使用している表示デバイスの多さです。スマートフォンやタブレット各種に対応するため、多数の異なる解像度とファイルタイプを同時に提供しなければいけないことでした。130分間のプロダクションを成功させるための重要な要素は、必要な複数の解像度、フレームレート、コーデックの配信を合理化し、かつ高品質なエンコードテクノロジーでした。これを実現するには信じられないほどの規模と複雑さを持つプロダクションが必要と思われました。

撮影舞台は、大手ハリウッド映画会社の敷地内に3つの別々のステージングエリア (1つは屋外) にて、約44台のカメラを使用し、生中継を含めた非常に野心的な取り組みでした。視聴者には「ブロードウェイの雰囲気」を提供する必要があり、放送時間の直前に、その地域を通過した雷雨の影響にも対処しなければなりませんでした。

この大規模なゴールデンタイムのテレビスペシャルを計画する際、制作チームは、前述した家庭のテレビ・スマートフォン・タブレット視聴者に向けてリアルタイムでコンテンツを放送・配信することに加えて、特殊なビデオ形式とファイルタイプを生成しなければいけないという要件にも直面しました。これらには、国際的なオンライン視聴やBlu-rayを目的としたストリームのほか、プロデューサー向けプレビューや上映のためのプロキシ解像度バージョンが含まれていました。

この規模と複雑さのライブ放送に対応できる利用可能なリモート制作トラック(OBバン)は、米国と言えどもわずか数台だけで、バイアコムの最新のAtlasトラックを採用するという案はすんなりと決定しました。 Atlasはファイルベースの取り込みと制作向けにゼロから設計されており、PronologyのmRes収録システムが設備されています。これにより、グリース・ライブの要件に対応するために必要となり多種多様な同時ストリームとファイルタイプをシンプルかつ簡単に作成できました。

mResエンコーディングテクノロジーは、各SDI入力チャンネル毎に完全な非圧縮ビデオをローカルサーバーにループレコーディングしつつ、他のストレージプラットフォームへ編集用高解像度メディアファイルおよびストリーミング可能なプロキシを含む複数層の録画機能を提供できるので、今回の様な用途に最適です。
このグリース・ライブでは、mResエンコーダ/レコーダをSony PWS-4500サーバーと組み合わせて、国際的なBlu-Rayリリース、オンライン有料リリース、ビューごとの配信などの将来的に作品のパッケージとして使用できるように分離および切り替えられたカメラのライブフィードを全て撮り込みました。mResでエンコードされたプログラムビデオとISOカメラフィードは、40台強のSmall Tree TZ5+というポータブルストレージと、mResのEdit-While-Capture (収録しつつ編集) 機能が使える何台かのAvid® ISISサーバーを有したオンサイトAvid編集スイートシステムにも記録されました。

12を超えるコーデックタイプ、10のフレームレート、480iから4Kまでの6種類の解像度を生成するmResの機能と、約7つのファイルコンテナのサポートにより、DNxHD 1080p/を含む同時ストリームとファイルタイプの同時作成を簡単に対応できました。番組の制作チームが必要とする23.98 Op-Atom、DNxHD 1080p OP1a、ProRes HQ 720p/59.94ファイル、および H.264を、合理化された効率的なワークフローにつなげることができました。

130分間のライブプロダクションを容易にしたもう1つのmResの特徴は、Pronologyのクリップコントローラーアプリケーションを介して簡単にリモートコントロールできる機能でした。これは、Avid ISISとSmall Treeストレージシステムの両方に加えて、採用されたAvid Media Composerにも対応されました。

このグリース・ライブショーは、多くの分野でEMMYの候補と受賞をし、そのエンコード/録画テクノロジーの分野で高く評価されました。制作チームは、画質を損なうことなく複数の解像度を瞬時に利用できるmResシステムの機能を賞賛しています。
グリース・ライブは、クリエイターにとって圧倒的な成功を収め、全世界1,200 万人以上視聴され、18歳から 49歳の間で4.3/13 の視聴率シェアを獲得。放送中のツイッター(現Xですね)に100万件以上の投稿。米国でのライブプレゼンテーションに加えて、カナダ全土にもリアルタイムで放送され、オーストラリア、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、英国、ラテンアメリカの多くの国々を含む他の多くの国でもその後視聴されています。